検査済証が無い→これから中古住宅・中古投資案件を購入、リフォームなど検討されている方々
1. 検査済証について
1-1 検査済証とは
「検査済証」は、対象の建築工事が完了した際に、その建物が建築基準法に基づいて適正に建設されたことを証明するための書類です。建築主は、工事が終わると完了検査を受ける義務があり、この検査に合格すると建築主事又は指定確認検査機関から検査済証が交付されます。これは、その建築及びその敷地が建築基準関係規定に適合してい事を確認した重要な証明です。
(※検査済証:建築基準法7条5項及び7条の2 5項)
1-2 検査済証と確認済証
確認済証は、建築主事等が建築主が申請した確認申請書について、建物や敷地などが法律等に適合することを確認し、工事開始前に交付される書類です。
検査済証は、確認済証が交付され確認申請図書通りに工事が終了し、その建物が完了検査で合格し交付されるものです。建物完成後に改修工事や申請が伴う増改築等行う場合などは、確認申請書を含むすべての申請図書関係が重要になります。
(※確認済証:建築基準法6条1項)
1-3 中古住宅の検査済証
過去のデータとして、国土交通省の「検査済証交付件数・完了検査率の推移」をご紹介いたします。2003年(平成15年)までは、検査済証取得率が低かったため、国土交通省から金融機関に対して「検査済証の交付=融資対象物件が建築基準関係規定を遵守しているか」の要請し、平成15年以降の新築住宅取得率が徐々に取得率が上がりました。一方で、平成15年以前の住宅については、検査済証を取得している建物が多くはありません。
(※国土交通省 効率的かつ実効性ある確認検査制度等 確認検査制度等のあり方の検討 (4)検査済証交付件数・完了検査率の推移)
https://www.mlit.go.jp/common/001017279.pdf
2. 検査済証が無い建物のリスク
2-1. 建築確認申請の手続きが見直し
今までのは中古住宅の売買において、検査済証の有無はあまり影響がなかったかと思いますが、今後は、建物改修予定などにより注意が必要になります。
2025年以降、建築確認申請の手続きが見直されます。検査対象の見直しや審査省略精度が縮小され、一般的な木造2階建てにつきましても、大規模の修繕や大規模の模様替えなどの工事についても建築確認申請が必要なとなり、検査済証の有無の確認が重要になってきます。
(※国土交通省 2025年4月から4号特例が変わります)
https://www.mlit.go.jp/common/001500388.pdf
2-2 違反建築物か既存不適格か、検査済証が有るか無いか
違反建築物は、新築の工事時点でその当時の建築基準法や建築基準法関係規定に違反している建築物のことを指し、違反内容の是正工事が必要です。
既存不適格建築物は、新築の工事時点でその当時の法等に適合して、その後の法改正があったとしても違反扱いにはならない建物を指します。
検査済証が無い建物は、「違反建築物」または「既存不適格建築物」であるか調査・確認が必要になります。検査済証・確認済証・確認申請書などの申請図書がすべて確認できる場合は、既存不適格であることを確認しやすいのですが、検査済証が無い建物については、違反建築物か既存不適格かを判断するのに調査・確認が必要になります。
2-3 違反建築物の是正
違反建築物は、安全性が確認できないため、建築主自身のみならず地域や近隣に影響を及ぼしてしまう可能性があります。特に古い中古物件などでは、建築確認や検査を受けていない建物は法令に適合していない建物もあるため、構造や避難、防火性能他に問題がある可能性があるため注意が必要です。
もし、違反建築物を取得した場合には、新たに所有者になった方が、違反部分を是正義務が発生してしまうため、購入する際には検査済証有無ほか調査確認することをお勧めします。
参考に法に適合していない場合の刑事責任例を下記致します
※国土交通省 違反建築物対策について
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000057.html
国土交通省 法適合遵守の啓発用のリーフレット
https://www.mlit.go.jp/common/001173075.pdf
東京都 違反建築物等の取締り
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/tamakenchikushidou/torishimari.html
横浜市 違反対策課の業務
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kenchiku/sodan/ihan/ihangyomu.html
3. 検査済証が無い建物の対応
3-1 台帳記載事項証明書の取得
検査済証が無い場合でも、建物確認申請や検査状況を確認する手段として「台帳記載事項証明書」で確認・証明する方法があります。これは、建築確認済証や検査済証を再交付するものではありませんが、建築確認済証や検査済証の交付年月日・番号が、役所の台帳に記載されている場合、台帳記載事項証明書として証明することができます。
3-2 国土交通省のガイドラインの検討
国土交通省では、検査済証が無い建物に対する対応策として、ガイドラインを策定しています。特に、中古住宅の流通を円滑に進めるため、検査済証が無い建物でも民間の指定確認検査機関が法適合性を確認できる仕組みが検討されています。このガイドラインを参考にしながら、建物の適法性を確認し、必要に応じた対応策を講じることが重要です。
※国土交通省「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」により
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000061.html
4. ケーススタディ
ガイドライン:
敷地内複数等ある民間施設、そのうち2棟を渡り廊下でつなげる計画になります。敷地内の最終的な検査済証が無かったため、計画時より、法適合状況調査、また、行政との打ち合わせを重ねて、ガイドライン使用前提で企画・基本設計・実施設計・申請を進めたケースになります。
建物利用停止解除:
関係規定の検査不履行により行政指導・行政サービス停止となり、2年ほど建物の使用ができなかった案件について相談を受けたケースで、関係規定設計、是正工事案作成、行政打合せ・手続き等を行い、検査済証の取得と共に建物利用開始を可能としました。
違反建築物の是正案作成:
行政より違反部分の是正指導を受けた案件について相談を受けたケースで、行政協議、是正案の計画・設計を行い、現実的な改修提案で行政の了解を得られました。
5. まとめ
検査済証が無い建物は、法的リスクや融資、増改築の申請問題に加えて、違反建築物である場合、所有者等にも大きな責任を問われる可能性があります。一方で、適切な調査や対応を行うことで、これらの問題を解決し、建物の価値や利用の可能性を最大限に引き出すこともできます。まずは、申請図書等の確認、台帳記載事項証明書などから建物の状態を把握することからはじめることをお勧めします。
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