災害リスクを回避する不動産投資のポイント

災害に強い物件の選び方で、リスクを抑えた賢い投資を!

1. はじめに:災害リスクを無視できない日本の不動産市場

日本は、諸外国に比べて、地震、台風、豪雨、洪水、土砂災害、高潮、火山といった自然災害が発生しやすい国土です。不動産投資を行う場合、これらの災害リスクを軽視することはできません。特に不動産投資は「長期的な」投資と経営であるため、様々なリスクがありますが、災害によって被災・修繕するリスクも大きな問題となりえます。

そのため、リスクに備えた物件選びが非常に重要であり、インパクトの強い災害に強い物件を選ぶことが投資成功のカギととも言えると考えます。この記事では、「災害リスクを回避するための物件選びのポイント」を具体的に紹介し、安心して不動産投資を進めるためにお役に立てればと考えています。

※国土交通省 「都道府県別の災害リスクエリアに 居住する人口について」ご紹介いたします。画像はこちらからの抜粋になります。

災害別に地図上で色分けされ利用しやすいかと思います

国土交通省 神奈川県における災害リスクエリアに居住する人口
国土交通省 神奈川県における災害リスクエリアに居住する人口

2. 災害リスクが不動産投資に与える影響

自然災害が不動産投資に与える影響は、物件の価値低下や収益の減少、さらには修繕費用の増加など、多岐にわたります。例えば、以下のようなケースが考えられます。

 

■地震   :

建物全壊の大破や一部損壊などの中破・小破が発生することで、多額の修繕費がかかります。また、大震災であっても建物が通常あるべき安全性を欠いているような場合には、家主が損害賠償責任を負うリスクも裁判事例などから考えられます。

■台風や洪水:

詳しくは、こちらで詳細を記載していますが、近年、気候変動・国の方針転換等、今後さらなるリスク増が想定できます。

■土砂災害 :

土砂災害は、すさまじい外力により、土砂によって一瞬にして多くの人命や建物などの財産を奪う災害です。山の土砂が集中豪雨などで下流に流される土石流、急傾斜や造成斜面が崩れるがけ崩れなどがあります。

 

このように、災害による被害が大きくなると、投資リターンの低下や損失のリスクが増大します。そのため、物件を購入する際には、災害リスクを十分に考慮することが重要です。

 

3. 災害リスクを回避する物件選びのポイント

次に、災害リスクを回避するために押さえておくべき物件選びのポイントをいくつか紹介します。

 

3-1. 地盤の強さ

地盤の強さは、特に地震リスクを回避するために重要です。

軟弱地盤や活断層は、地震の際に大きな被害を受けやすく、建物の倒壊や損壊のリスクが高まります。地盤が強固であるかどうかを調べるためには、以下のような方法もあります。

■地盤調査:

調査会社に依頼・調査し確認、または、行政などで公開している近隣の地質調査結果などで地盤の状況を確認し、物件の安全性を確保します。

■過去の情報や周辺建物の状況: 

地名などから地盤の診断を行ったり、周辺建物の大きな高低差無い・沈下・亀裂などを確認します。高度な診断等が必要な場合、専門家に相談をしましょう。

 

3-2. ハザードマップの確認

ハザードマップは、洪水や土砂災害のリスクを把握するための重要なツールです。

物件のある地域が、洪水や土砂災害の影響を受けやすい場所に位置しているかどうかを確認するために、行政が公開しているハザードマップを必ず確認しましょう。ただし、ハザードマップも100%正しいわけではありません。後ほど少し詳しく紹介します

■地域ごとのリスク確認の手順: ハザードマップを使って、対象地がどの災害リスクにさらされているかを詳細に確認します。特に低地や河川に近い物件は、浸水のリスクが高いので注意が必要です。

 

3-3. 建物・敷地の耐震性

建物の耐震性は、不動産投資において最も重要な要素の一つです。

日本では、1981年以降に建築された建物は新耐震基準を満たしており、地震に対してより強い構造となっています。新耐震基準を満たしている物件を選ぶことで、地震時のリスクを大幅に軽減できます。

■耐震補強済みの物件を選ぶ理由: 特に古い物件を購入する際は、耐震補強が行われているかどうかを確認し、補強されていない場合は購入前に考慮する必要があります。

 

3-4. 災害に強い地域を選ぶ

災害の発生が少ない地域を選ぶことも重要です。特に地震の影響が少ない地域や浸水リスクが少ない他、被災する可能性が低い建物を選ぶことで、長期的な安定した収益を見込むことができます。

 

3-5. 保険と補償制度の確認

火災保険や地震保険に加入することで、災害によるリスクをカバーすることができます。

特に地震保険は、地震による損害に対して補償を行うため、万が一の際のリスク軽減に役立ちます。保険加入の際は、カバー範囲や補償額を確認し、十分な保険に加入することが重要です。水害については、今後、規定改定される可能性がありますのでご注意ください。

 

4. 水害・土砂災害の災害リスク増大

近年の気候変動の影響で、豪雨等による被災が増加しており、今後は水害や土砂災害のリスクの増加が予想されています。※詳しくはこちらへ

 

4-1. 気候変動により「流域治水」に転換

気候変動による大雨や台風の頻度増加により、従来の治水対策が通用しなくなってきています。通称「流域治水関連法」)が令和3年5月10日(月)に公布され、「流域治水」といった新たな治水へ転換されました。「降雨が河川に流出し、河川から氾濫する」という水の流れを一つのシステムとして捉えています。今後、浸水リスクのあるエリアでは、水害リスクを事前に確認し、さらなる対策を講じる必要があります。

 

→水害についての詳細は、こちらへ「水害・洪水に強い設計、水害・洪水に備える建築」

 

4-2. ハザードマップだけではない土砂災害のリスク

土砂災害は、地震や豪雨に伴って発生することが多く、行政が公開しているハザードマップで危険なエリアを確認できます。しかし、マップでは判断できない被災事例も発生する可能性はあります。都心部急傾斜地のがけ崩れ、違法造成・危険な盛り土、区域を超えた災害など、物件の周辺環境や地形も考慮し、土砂災害のリスクが少ないエリアを選びましょう。

 

5. 災害により多大な影響を受けている事例

5-1 所有者の責任

近年、起きた事故例ですが、神奈川県内のマンション敷地の一部の斜面で崩落が発生し、歩行者が巻き込まれて亡くなった痛ましい事例です。民法717条の【土地の工作物等の占有者及び所有者の責任】を問われるため、本件の場合、区分所有者・管理会社に多額の損害賠償が求められました。

 

5-2 都市型土砂災害

過去の開発工事で設置した擁壁の上に、必要な手続き等を行わずに擁壁等を増築(2段擁壁)、また、法や条例などの基準が守られていない構造の上、維持管理や改修時期などにも改善されない擁壁の事故例が近年発生しています。過去の宅地開発時期等によっては、擁壁の老朽化が進んでいる可能性あります。

6. まとめ

災害リスクを無視せず、慎重に物件を選ぶことが、不動産投資の成功につながります。

地盤の強さやハザードマップの確認、耐震性と地域選び、そして保険加入などの要素を考慮することで、リスクを最小限に抑えた投資が可能になります。

賢い物件選びで、長期的な収益と安心を確保し、災害リスクに備えた投資行動を心がけましょう。

 


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